道具の中で最も高価なパーツが胴である。
サクラ材を刳り貫き、漆をかけて蒔絵が描かれてあり、とても美しく工芸品としての価値もある。
蒔絵の図案には、音にまつわる謎かけが仕込まれていることもある。
内部には様々なカンナ目が施してあり、そこから作者が推量されるという。
能楽の舞台で使用されているのは、江戸時代もしくはそれ以前に作られたものばかりだ。
百年前(明治時代)に作られたものは新胴と呼んでいる。
したがって能を見来たお客さんは、何百年も前に作られた楽器の音を聞くことになる。
胴の面白いところは、同じ皮にかけても、一本一本微妙に違う調子(音)が鳴り、それぞれに個性があるところだ。
胴が調子(音)に占める割合は、せいぜい10%程度だろうが、この部分は胴にしか出せないものであり、それが調子全体の個性を作り出す。
写真は「茗荷」の胴。
調子よく、音のなびきも長く、皮を選ばないオールマイティで、僕の第一のお気に入りである。
謎解き・・・茗荷は、根から直接花が咲くことから、根=音で「音に花が咲く」