七鎖目
大鼓方の仕事は舞台に出演したり教室で稽古するだけではなく、内職ともいえる手仕事が多くある。
大鼓を打つ時には、右手の中指と薬指に「指皮」といういわゆるプロテクターを装着するが、これを作製するのもそのひとつだ。
指皮は石井流では本来は使わないものだが、近年の舞台数や皮の質の変化により指皮は演奏に欠かせないものとなった。
最近は好みの大きさ・硬さで作ってくれる業者もあるのだが、僕は自分で作ることにしている。
作る手順を紹介しよう。
まず糊を作る。
水、寒梅粉、市販でんぷん糊、木工用ボンドを混ぜ合わる。この時、糊の粘度が重要である。濃すぎず薄すぎず”ツーッ”と伸びるくらいにする。
次に紙を用意する。
薄くて繊維の方向がそろっていない粘り気のある和紙が良い。僕は古い和綴の本を壊して使ってる。外側に使う紙は黒谷和紙を使った。
外側2枚分に色を付けるため、とても飲めそうにない位の濃いコーヒーを淹れて、染むらが出ないように一枚一枚丁寧に紙をつけて数時間おく。
指をかたどった木型に、一枚一枚なるべくしわにならないように貼り付けて乾かす。いろいろな方向や場所に貼るのがポイント。
凹凸ができるのでヘラで押しつぶして形を整える。
10~20枚ほど貼ったらコーヒーで染めた仕上げの紙を貼り、木型から切り離して切り口の角を落とし、補強用の皮を貼りつけて出来上がり。
二日間に亘る作業である。