三五鎖目
かなり専門的になるが、大鼓の打ち方について書こう。
大鼓は小鼓と違い、調べ緒の握り方によって音を変えることはできない。
そこで打ち方の強弱や皮の打つ場所、手の当て方などをいくつかの音を打ち分けている。
石井流では「チョン・チン・ドン・ツ」の4つの音を打ち分ける。
まず、大鼓と言えばこの音である。
「チョン」
当家に伝わる手附には、「鼓ノ皮ノ中央ヨリ少シ外面ニ依リタル所ヲ右ノ手ヲ充分斜メニ延シテ親指ヲ省ク他ノ四本ノ指ニテ強ク打ツ主タル音ナリ」とある。
この「チョン」は、大鼓の演奏で主たる(最も多く出てくる)音で、最も強い音だ。
主たる音なので、良い音を出すことがとても重要だ。
良い「チョン」を出すためには、靡きが大事だと思う。
そのためには、力を抜いて打ち、まず先に掌が皮の縁の部分に当たり、手のひらは皮の縁に当たったままその後から指先が皮の中央よりやや外側(胴が皮に当たっている部分に第1関節があたる位置)を打つ必要があり、手の痛みに対する恐怖に打ち勝ち、良い音を出したいと思う欲を捨て、体幹は動じず、うまく腕全体の力を抜いて打たなければならない。
これはなかなか難しい。
だが、これがうまく決まった時は実に爽快である。
機会があれば是非体験してみてはいかが。