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合、不合

三〇鎖目

遅々として進まない当ブログであるが、なんとか30回目まできた。

だんだんネタがなくなってきたので、少々マニアックなことを書こうと思う。

タイトルの「合、不合」はアウアワズと読む。

どういう意味かと言うと拍子(リズム)が旋律に合うか合わないかということである。

能の音楽は、謡もしくは笛の旋律が明確に拍に合う箇所を拍子合(ヒョウシアイ)、全く合わない個所を拍子不合(ヒョウシアワズ)という。

また、拍子にあっているけれど合っていないような、合っていないけど合っているような状態を合、不合と言う。

この拍子不合の箇所に演奏することをアシライと言う。

アシライは、旋律上の拍はないのだが、なんとなくノリがあっている。

旋律上の拍がないので、何鎖(何小節)打つかは気分次第でかまわないが、始まりと終わりだけはきっちりと合うように演奏しなければいけないので、とても難しい。

こういう概念は、西洋音楽にはないらしいが、シテなど立ち方の動きに制約が出ず、囃子(打楽器)も謡や笛の旋律にとらわれず、情景描写や立ち方の心理描写に重きを置いて、のびのびと演奏できる、とても便利な奏法である。

捉えどころがない曖昧なリズムなのだが、この合っているような合っていないような「合、不合」の拍子こそが能楽囃子の極意と言える。