二十九鎖目
もちろん公演のためである。
二日間の公演は満員のお客様でご好評を頂戴した。
海外公演での課題の一つに舞台設営があるが、今回はこの点において全く問題がなかった。
と言うのも、ブラジル能楽連盟の方が、あらかじめ舞台を設営していただいていたのだ。
舞台はの寸法、しつらえ、すべて問題なくとても助かった。
ブラジル能楽連盟は、日本からの移民たちが現地で能楽文化を伝え、いまも活動を続けている。
どれだけのご苦労があったのだろう。
小鼓は皮が破れたら自分たちで作り(犬の皮で代用)、大鼓も大切に大切に使い、
衣装も自分たちで作っているとおっしゃっていた。
今年は公演で高砂を上演されたとのこと。
メンバーの方に流儀はなんですかとお尋ねしたら、現地の先生に習っているから、わからないと。
流儀の枠組みなど関係なく、とにかく能楽を愛する。
素晴らしいことである。
能楽の芸事が日本のみならず、地球の裏側でも脈々と受け継がれている。
僕は感動を覚えた。